cosine

「広告宣伝」ということですが、広告宣伝というのは、一般的にグラフィックデザインを指す場合が多いですね。確かに、世の中が成熟すればするほど、広告宣伝というものが必要になるんです。一番大きなのはマスメディア、テレビでしょうね。新聞は、この頃中々広告が取れなくて苦しいという。印刷物、これは新聞でも、雑誌でもそうですが、最近は世の中がまた随分変わって来ていますね。例えば、飲料。自販機でたくさん出ているでしょう？ 大体100円とか、150円くらいで売っていますね。いろんな果汁のものとか、人工的なものとか、お茶とか…。皆さんご存知でしょうけど、ガソリンよりも高いですよね。皆、それを飲むんですね、結構。なぜだろう。これはやっぱりコマーシャルの力、だと思うんですよ。実際に飲みたくて飲むと言うより、飲まされているというか、洗脳されて飲まされている…。おそらく、あの値段の半分はテレビコマーシャルでしょうね。本当にそう思いますよ。

　私の会社でも、各休憩室に自販機が３台くらい並んでいますよ。タバコの自販機まで含めると４台。私は、撤去しろと言うんですが、中々撤去できない。余談ですが、この地震が発生した後に、私も考えました。義援金のような、被災者たちの助けになるようにことを何とかやりたい。しかし、このかた10年も、社員の給料もあまり上がっていませんし、賞与もちょっぴりしか出てないし、社員から義援金を集めるというのも辛いものがあるんですね。そこで、この飲料、飲んだつもりで義援金を出してくれ、つもり義援金、タバコも吸ったつもりで出してくれと、今週の月曜日に社員にお願いしたんですよ。喉が渇いたら、水道水を飲んでくれ、旭川の水道水はおいしい、大雪山から始まる水を一番先に旭川で飲んでいる、安全なんだと。だから水道の水を飲んでくれと、紙コップも用意してね。1週間経って、今日、どれくらい集まった？って聞いたら、27000円くらい集まったって言うんだよ。コインばかりかって聞くと、1000円札も少し入ってるって言うから、飲まなくてもお金を入れた人もいるんでしょうね。とにかく27000円集まりました。４月一杯って決めてますから５週間あるんですが、ずっとそれぐらいの金額が集まるかどうか分かりませんが、だいたい10万円くらいは集まるかなと考えているんです。そうなると会社も同額くらいのお金を出さなきゃなりませんが、そんな形で義援金を集めています。

　何かをしたいと思っている人はたくさんいると思うんですよ。だけど、具体的な行動に出られない。もちろん、ここに集まっている方は皆さん何かの形でおやりになっていると思いますが、なかなか行動に出ないんですね。何かをやろうとする時に、その方法を考えるというのも、これも私はデザインの１つだと思うんですよ。デザインという言葉をうんと広げて話をしているんですが、私は家具を作っていますから家具のデザインはもちろんします。ヒット商品も結構あります。デザインというのは宝の山みたいなものでね。しかし、世の中が変わるたびに、何か新しいことをやらなければいかん。

　バブルが崩壊した時です。前に話をしたことがあるかも知れませんが、２年で35％売り上げが下がりました。会社を始めてから23年くらい経っていましたから、オレが今までやって来たことは何だったんだろう、そう思いました。とにかく、もっと作ってもっと売って、もっと利益を出してという、とにかくもっともっと、右肩上がりでずっと考えて来ていたんです。そして将来に向かって新しい投資も考えて、土地を買ったりして、次に備えてね。もっと行こうもっと行こうと思っていたんです。ところが、91年、今からちょうど20年前です。初めて売り上げの頭が下がったんです。わずか、３％くらい。初めての経験だったんです。おかしいな、と思った。おかしいなと思ったけどね、しかし目が覚めていないんですよ。まだ行ける、上を向いていけると思っていながらも、世の中の動きがどんどん変わって来るんです。そこで、私は、売り上げがピュッと下がって、方針を変えるのに約半年くらい、それほど長くはないです、半年かかりました。それは、もうたくさん作るのはやめよう、ということなんです。