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長原 實 みのる塾

[みのる塾]第20回

森林組合に相談してみると、我々が木を植えなきゃならない場所って、たくさんあるんです。極端なのは、バブルの時代に北海道の土地を買って一儲けしようとした東京かどこかの不動産屋さんがいるんですよ。別荘地かなんかで分譲しようと。たくさんありましてね、そういう話が。それで買い占められた土地があるんですよ。それがバブルが崩壊して、その儲け話がなくなって、木だけ伐採してお金に換えて、あとはほったらかしている土地があるんです。これ、上川管内に相当あるはずですよ。隠れているんですね。そうした土地を紹介してもらいながら、今も木を植え続けているんです。最近は、毎年約3000本ずつ植えていますから。植林やるぞ、と呼びかけると250人か300人くらいは集まるんですよ。1人10本くらいノルマでね、植えるんです。最初に植えてからもう20年近く経っていますから、もうこの天井よりも遥かに高くなっていて、あと2、3年もするとドングリの実をつけるようになります。実を落とすようになれば、広がって行くんですね。動物達が広げてくれます。餌ですから、あちこち運んで広げてくれるんです。そういうことも期待しながら、やってるんです。おそらく、これは私がいなくなっても続くでしょう。これも、地域のデザインです。

 このまちは、農業です。周辺はみんな農業なんです。農業を基盤にして、そこにどういう付加価値を付けるか。農産物をただ売るだけ、新鮮な農産物をただ売るだけでも、それは立派な産業経済ですけれども、それをさらに加工して付加価値を付けるということです。さっき、この明太子のせんべいをいただきましたが、これだってもともとはタラコですよね。こんな話は皆さん聞き飽きているかも知れませんが、タラコだってもともとは北海道なんですね。それが九州に行って明太子に加工されて、5倍くらいの値段になって我々は食べているんですよね。今、北海道でもタラがあまり獲れませんから、九州の明太子の業者は北欧から買っていますよ。北欧の人はまた、タラを食べるんですよ。干物にしてたくさんタラを食べます。タラコをほとんど捨てていたらしい。それを商社が見つけてビジネスにしたというわけですよ。明太子が出来たというのは、韓国に近いという背景がありますね。明太子を作った人というのは、昔の朝鮮から帰って来た人なんですね。戦争が終わって帰って来て、辛い味を日本に持ち込んでこれを作ったんです。明太子はキムチの味に似ていますね。韓国、朝鮮の味です。

 そんなことですから、北海道だってまだまだあるはずですよね。大雪山の裾野に広がる森というのは、広大な森なんです。皆さんはご存じないかも知れないけども、1954年(昭和29年)に台風15号というのがあった。私は15歳でしたが、とにかく北海道の山が、航空写真で見るとマッチ箱を引っくり返したような、それくらい膨大な風倒木が出て、それが北海道の森に大きな痛手になったと言われていますがね。その風倒木を処理するために、山の中にたくさん製材工場を作ったんです。当時の農林省、北海道の林務部も、そういうことを盛んにやりました。それで、どんどん製材が出ますね。これをインチ材としてアメリカやヨーロッパにどんどん輸出しました。たった20年くらいの間に、北海道のミズナラ、カバもそうですが、ほとんど輸出されてしまった。その時代、1ドル360円ですからね。輸出は儲かるわけですよ。そんな時代もあって、北海道の森林、特に広葉樹がなくなったんですね。

 針葉樹はどんどん植えました。なぜ針葉樹を植えたかというと、成長が早いからです。だいたい70年、80年で大人の木になりますね。その間に30年ぐらいで1回間伐しますから、それがお金に換わる。7、80年というと、息子の代か、孫の代くらいの時間の中でサイクルするんです。経済として成り立つ範囲なんです。だから、みんなカラマツをはじめとする針葉樹を植えるようになった。その分だけ、当然、北海道で一番価値のある広葉樹がなくなって行ったんですね。この壁なんかも、これカバでしょうね。こんなカバは今、ほとんどないですよ、北海道に。私は、北海道の森林の宝物はミズナラだと思っています。このミズナラがなくなった北海道なんて、森の生産性がほとんどなくなってしまいますね。森の生産性、森の付加価値を高めなければいけない。ということと、そのミズナラを育てることによって、地域社会の産業が成り立つ、もちろん輸出もできますからね。森を育てる、広葉樹を植えるというのは、そういう意味から、北海道という島が100年後にも自立しているという環境を作りたい、ということなんです。会社が赤字でヘトヘトになっているのに、そんなバカなことをやって、という一面もありましたけれど、私はそういうふうに考えを変えてしまったんです。それもやっぱり、地域のデザインの1つだと思うんですよ。

 私が言いたいのは、特に経済活動をなさる経営者であれ、役員であれ、このデザインという言葉を広く、深く理解していただきたい、ということなんです。それは何かと言うと、その時代背景を踏まえながら独自の道を生み出す。そして三方得ですね。自分の店にとっても、会社にとっても、社員にとっても、あるいは社会にとっても、多くの人たちにとっても利益になることでなければいけない、ということです。しかも、それが自分の好きな仕事であれば、そんな幸せなことはないではないか、ということになる。これら総合的に含めて、私はデザインスピリットだと思ってます。

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