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長原 實 みのる塾

[みのる塾]第14回

自分の業界の話をしますと、そうですねぇ、1990年頃まで、家具の業界もかなり勢いがありました。最も勢いがあったのは、1980年頃でしょう、75年から85年にかけてでしたね。その頃は、いくらでも作れば売れた。特にタンスが良く売れたんです。なぜタンスが売れたかと言うと、団塊世代の人たちの結婚ラッシュの時代なんです。全国の家具製造業者の6割から7割がタンスを作っていたんです。しかし1980年代に入ると、そのタンスに陰りが出て来たというのは、団塊世代の結婚ラッシュが終わったからです。明らかにタンスというマーケットに陰りが出始めた。デザインという言葉とタンスを照合しても、なかなかつながらないんです。タンスというのは、いわば箱なんですね。収納の箱です。だから、どこで競争するかというと、表面の顔だけなんです。扉があったり、引き出しがあったりね。その表面の顔だけしかデザインの対象にならない。機能的には、どれもほとんど同じです。従ってサイズもほぼ同じようなものになってしまいますね。顔だけが競争の対象ですから、競争のエリアというのは非常に小さい。つまり私的な活動があまりできない分野なんです。だから、タンスを作っていた全国の人たちには、ほとんどデザインという言葉は通じませんでした。

 しかし、団塊世代の結婚ブームが終わって、市場に限りが出て何か他のモノに切り替えなければならない、新しいモノを作らなければならないという時になって、初めてハタと困るわけですよ。でも中々変われないんです。長年タンスばかり作っていると、他のモノに変われないんです。非常に残念なことですけども。私はタンスを作ったことはないんです。創業時からイスを中心にしてものづくりをやって来ていましたから、最初からデザインというのは非常に重要な仕事なわけです。

 なぜ、イスがデザインとして重要なのかというとですね、イスはあらゆる角度から見て美しさを問われるんです。機能的にも、かけ心地という機能性が問われますし、しかも人間の体格というのはそれぞれ色々な違いがありますからね。機能的にも非常に多様性がある。また、機能性の中で、休息用のイスとか、食事用のイスとか、仕事用のイスとか、それぞれ違った機能を必要としますから、つまり、考える領域が非常に広いんです。従って、イスづくりというのは特にデザインを重要視する業種であると同時に、技術的にも色々な蓄積が必要だということになります。

 そこで、1980年代に、私を含めて家具業界の数人の人と、旭川東海大学の2人の教授が、旭川家具の将来について議論しながら、まぁ酒も飲みながらですね、タンスという商品は日本人の暮らしの文化の中に必要がなくなる時代が、すぐそこに来ているよ、ということをやや共通の感じ方、考え方として、持つようになったんです。タンスはもう市場がなくなる、必要とされなくなると。それが1980年代です。しかし、1980年代後半になるとバブルですからね、まだかなり高価なタンスが売れるんですよ。どこで売れたかというと、北陸から東海、金沢、福井、名古屋、その辺りはバブルということもあって、数百万円というタンスがまだまだ売れたんです。そうした状況が一方にある。その一方では、90年代に入ると団塊二世がまた結婚ブームを迎えるから、その時にまたタンスの市場が活性化するのではないかという期待感もあって、タンスを作っている人たちが中々他のモノに切り替えて行くことが出来なかったんですね。またいい時代が来るよ、という考え方です。
 結果的にどうなったかと言うと、90年代に入って、特にバブルが崩壊して、急速にタンスの需要はなくなりました。これは住宅の変化とも関係があるんです。この頃になって何が変わったかと言うと、これは菅原さんのご商売ですが、住宅、マンションもそうですね、要するに収納家具、洋服を掛けるとか、そうした機能は住宅の中でほとんど満たすようになったんですね。ワードロープであるとか、クローゼットであるとか、そういうものは住宅の設計の中に全て組み込まれて行ったということがありまして、急速にタンスの需要がなくなったんです。

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